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2013.09.09
山陽新聞夕刊「一日一題」9月2週
音楽=無形の感動
 
 小学4年生、少年合唱団に入団した。稽古事の続かない私が唯一継続できた事。美しいボーイソプラノだったのだ。学校の成績はふるわなかったが、音楽と体育と美術だけは人と肩を並べる事が出来た。中1のクリスマスにギターを貰った。世はフォークソングブーム。吉田拓郎やかぐや姫をひたすらコピー。ギターが弾けたら女の子にモテるという幻想を信じて頑張った。バンド活動は大学まで続き、一緒に歌っていた女の子は芸能界入り。今はマイク真木の奥さんをやっている。
 私の出身大学は音楽と美術の二学部からなり、全く違った人種が道を隔てて学んでいるのだが、その交流は稀。音楽学部は小さな時から研鑽を積んで来たエリートの集まり。美術学部は浪人を重ねて入学してきて年齢もまちまちで変わり者が多い。道のあちら側のお嬢さん達は怖いモノのようにこちらを見る。     
 大学4年の夏頃、モデルをお願いしたヴァイオリン専攻の女学生と親しくなり、自分の音楽的才能の無さを痛感。以来ギターを持たなくなった。何事も日々の修練なしではろくなモノにならないがソレ以前に人は持って生まれたものが違う。自分らしさを活かすことが最も有効な社会貢献。その女学生は30年経った今も傍らに居るが相変わらず生活の主体は音楽だ。
 演奏の才能は無いが、音楽は日常に欠かせない。日がな一日CDを回しているかFMを流す。このところはアルゼンチンの豊かな音楽性に惚れ込み傾聴する毎日。世界中の国々に独自の音楽があり、生活に大きな誇りと心の糧を提供している。コンサートに出かけ、素晴らしい演奏にめぐり会った時には美しい記憶が生まれる。形に残らない感動は一生心を豊かに潤してくれる。
山陽新聞夕刊「一日一題」9月2週