平成二十六年秋。古い城下町「足守」に佇む茶席「常光庵」において展覧会と茶会を開催した。「空・風・火・水・地」をテーマに六部屋の茶室を使い、映像・木彫・軸・茶道具などをモチーフに空間構成をした。篆刻家の平松晃一氏を賛助に迎え、オブジャに印を刻みその印を使った軸を製作していただいた。
わずか四日間の開催であったが、毎日三席の茶会を開き、多くの来客に賑わった。
五十の手習いで始めた茶道。
時間と天候のうつろいを光の変化で感じさせる濃密な茶室空間。
(その佇まいは、茶道具の設えの有る無しに関わらず瑞々しく厳粛だ。)
炭火の香り、ふつふつと湯音を発てる釜、密やかに生命感を感じさせる時間。
照明もなく光による演出ができない茶室では、作品のあるがままの力が試される。
時にははっきりものが見えないほど暗いこともある。
しかし、もはや私は作品が見せたいわけではない。
そこに顕現する懐かしくも新鮮な、そして清々しい空気を提供したいのである。
平成26年10月31日〜11月3日
岡山市北区足守「常光庵」
撮影:池田理寛・よしもと正人(作品写真)